基礎

オルカンとS&P500の違いって何?徹底解説

2024年6月7日

オルカンとS&P500の違いって何?徹底解説

こんな悩みを解決していきます。

最初にオルカンとS&P500についての基本的な情報を解説、その後、両者の違いを8つのパートに分けて順番に説明していきます。

後半は、オルカンとS&P500のどちらに投資するべきかについて、双方のメリット、デメリットを提示。
実際の買い方も証券会社ごとに見ていきます。

最後に、改めてインデックス投資の基本についても振り返る、こんな構成になっています!

オルカン・S&P500とは?

「オルカン」=全世界への分散投資

オルカンについて詳細はこちら。

「S&P500」=アメリカ経済のほぼ全てをカバーする株価指数

S&P500は、米国株式市場の動向を把握するための主要な株価指数の一つです。

これは、格付け会社「S&P」が算出しており、ニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場する大型株500銘柄の株価を基にした時価総額加重平均型の指数です。

S&P500以外にも、以下のような関連指数があります。

S&P100S&P500の中でも特に時価総額が大きい100銘柄で構成
S&P400中型株400銘柄で構成
S&P600小型株600銘柄で構成

さらに、S&P500は単に株価指数としての意味だけでなく、S&P500を基準とするインデックスファンド(投資信託)のことを指す場合もあります。

用語解説

【S&P】
米国の格付け会社「S&P Global Ratings」の略で、以前は「Standard & Poor's」と呼ばれた。
政府が発行する国債や企業の社債について、その利払い能力や償還能力を評価。長期格付けの最高位は「AAA」で、トリプルB(BBB)までが「投資適格」とされており、投資家は債券のリスク等の判断材料としている。

オルカンとS&P500の違い9つ

ここからは、オルカンとS&P500の具体的な違いについて8つの項目に分けて解説していきます。

①基準額(チャート比較)

過去データでの比較では、オルカンに比べてS&P500のほうがパフォーマンスが良い結果となっています。

S&P500のほうがオルカンに比べてパフォーマンスが良い理由としては、

・中国経済の鈍化
・米ハイテク株の急成長


などが挙げられます。

②月間積立金額ランキング

月間の積立ランキングを楽天証券の全銘柄ランキングを元に見てみましょう。

ご覧の通り、1位にS&P500、2位にオルカンと両者で上位を独占していることがわかります。

純資産額を見るとS&P500が2位のオルカンと比較して1.2兆円ほど上回っており人気の高さがわかります。

ですが、2位にのオルカンも2024年1月より始まった新NISAの影響もあり純資産を急激に伸ばし、わずか3ヶ月ほどで純資産額を1兆円増額させていて、S&P500に負けないくらい人気が高いです。

③組入上位銘柄

オルカン、S&P500の組入上位銘柄についてはどうでしょうか?

両者を比較すると、構成比率について違いはあるものの、銘柄については一部を除きほぼ同じであることがわかります。

これは、オルカン、S&P500共に時価総額ベースで組入銘柄を決定しているため上位銘柄には多くのハイテク企業が名を連ねることになります。

④セクター比率

③の上位組入比率をセクター比率で見てみると次の通りです。

組入上位比率では一見同じような構成に見えていましたが、セクター比率では「ヘルスケア」や「資本財」などで違いが見られます。

⑤国別構成比率

国別構成比率については、下記の表の通りです。

S&P500はアメリカの上場企業上位500社で構成されるため、100%アメリカです。

対して、オルカンは60%以上をアメリカが占めて入るものの、残り約40%は広く分散されていることがわかります。

オルカン、S&P500国別構成比率
引用:新NISAナビ

⑥過去リターン オルカン

過去リターンを見ると、ハイテク企業の成長などで好調なアメリカ経済の影響もあり、S&P500のほうがリターンが高くなっています。

・オルカン 設定来 年率+17.67%
・S&P500 設定来 年率+20.22%

⑦シャープレシオ

用語解説

【シャープレシオ】
投資のリスクとリターンのバランスを評価するための指標。投資のリターンがリスクに見合っているかどうかを判断するときに用いる。

シャープレシオの指標が、

「1」の場合リスクとリターンのバランスが均衡している状態
「1」を超えた場合リスクに対してリターンが良い状態
「1」未満の場合リスクに見合ったリターンが得られていない状態

オルカン、S&Pのシャープレシオをそれぞれ見てみると、若干S&P500のほうが高いですが、ほぼ違いがないことを示しています。

⑧相関係数

オルカンとS&Pの相関係数は、2024年3月時点で「0.98」で非常に連動性が高くなっています。

そのため、リスク分散を考えた場合に両者に投資することは、リスク分散にはならないことを示しています。

用語解説

【相関係数】
2種類のデータ間の関連性を示す指標のこと。
「+1」に近い=連動性が高く、「-1」に近い=連動性が低い とされる

⑨人口ボーナス(期)

人口ボーナス(期)によって、株価の上昇傾向が続く傾向があります。

用語解説

【人口ボーナス(期)】
生産年齢人口(15歳以上65歳未満)が総人口の2倍以上ある期間のこと。

人口ボーナス期では、労働力が豊富になり個人消費が活発になる一方、高齢者が少なく社会保障費用が抑えられるため、経済が拡大しやすいというメリットがあるとされる。

日本も例外ではなく、人口ボーナスを経て行動経済成長を遂げています。

日本の人口ボーナス期
出典:野村証券

日本を始め、人口ボーナスを経て経済成長を遂げてきた国の多くは、生産年齢人口の現象とともに成長の鈍化が予想されています。

そんな中、オルカンの構成地域でもあるインドでは、今後10年以上にわたり人口ボーナスによる高度経済成長が予想されており注目されています。

人口ボーナス期 日本、中国、インド比較
出典:野村証券
インドの人口ボーナス期
出典:野村證券

「オルカン」と「S&P500」ならどっちに投資するべき?

以上の内容を踏まえて、結局オルカンとS&P500とでは、どちらに投資するのが良いのでしょうか?

結論、

・直近の成績重視、ある程度リスクを許容するなら「S&P500」
・投資初心者やなるべくリスクを回避したいなら「オルカン」

このようにまとめられます。

以下にオルカンとS&P500のそれぞれにメリット、デメリットをまとめましたのでこちらも参考にしてみてください。

S&P500のメリット

 ① 銘柄を入れ替える必要がない

S&P500は、自動的に主要な大企業500社を選定しているため、投資家自身が個別に銘柄を選び直す必要がありません。

S&P500構成上位銘柄
出典:JTG証券

この表は、2024年4月末現在のS&P500の構成銘柄上位10銘柄です。

S&P500の銘柄入れ替えの時期は四半期に1回、つまり年4回、厳しい基準に照らし合わせてその都度構成銘柄を入れ替えています。

このようにS&P500に投資するだけで、自動的にアメリカの主要企業の最新のポートフォリオを保持できます。

② 今後も人口増加が見込まれている

アメリカは、先進諸国が軒並み人口減少の傾向にある中、数少ない人口増加国です。

グラフの通り、アメリカは1910年の統計開始以来右肩上がりで人口は増え続けています。

2020年の時点で人口は3億3000万人を超えていて、先進国の中で突出して人口が多いです。

2023年11月、米国政府統計当局が「2080年に3億7000万人に達し、その後減少に転じる」ことを初めて発表しました。

それはつまり、「2080年までは人口が増え続けることを予想している」と言い換えることもできます。

アメリカ経済の今を反映するS&P500にとって、この傾向は大きなメリットと言えるでしょう。

③ アメリカの成長を最大限享受できる

アメリカは世界最大の経済大国です。

2023年に、日本がドイツに名目GDPで抜かされて4位に転落した、とのニュースが報じられたことは記憶に新しいかと思います。

世界のGDPランキングトップ5
出典:セカイハブ

GAFAM(Googe、Amazon、Facebook(現META社)、Apple、Microsoft)に代表されるように、世界的にも大きな影響力を持つ企業の多くがアメリカから始まっていることは紛れもない事実です。

先の人口増加と相まって、今後も経済成長が見込まれており、その恩恵を最大限受けられるのがS&P500といえるでしょう。

S&P500のデメリット

① 経済構造の偏り

S&P500はアメリカ主要500社、それもハイテク関連株に偏った形で構成されています。

経済構造の偏りは、その分野の不調=ポートフォリオ全体への影響へと直結します。

オールカントリーのような特定の地域や経済状況に集中しない分散投資型ポートフォリオとは違い、S&P500のような一国集中投資は、その国の経済状況に大きく左右される、というリスクが存在します。

② 国力の衰退リスク

世界一の経済大国アメリカも、いつまでもその状況が続くとも限りません。

近年、インドを始めとする多くの新興国・地域では著しい成長を見せています。

ドルは今もなお世界の基軸通貨として多くの国で利用されていますが、先のロシア・ウクライナ戦争などの不測の事態を背景に、今後世界の基軸通貨が置き換わる可能性も否定できません。

オルカンのメリット

① 全世界の経済成長の恩恵を受けやすい

オールカントリーへの投資は、新興市場や先進国といった世界経済全体の成長機会を取り込むことができます。

特に新興市場は高い成長ポテンシャルを持っており、結果としてポートフォリオの成長率を高めることが期待できます。

② 信託報酬が非常に安く、低コストである

日本では、2024年1月から始まった新NISAを追い風にインデックス投資への資金流入が加速しています。

そのため、ファンド間で信託報酬の価格競争が起きており、有名なところでは三菱UFJアセットマネジメントの「eMAXIS Slim全世界株式」が
信託報酬0.0575%など、非常に安く低コスト化が進んでいます。

③ 1つの国に依存しない投資が行える

S&P500のように、特定の国に対して集中して投資する形とは違って、オルカンは全世界株式への分散投資です。

将来起こる可能性のある経済の停滞や衰退、人口減少などのリスクが、分散投資によってリスクそのものも分散されることは大きなメリットと言えるでしょう。

④ 米国中心の全世界株式ETFがある

全世界株式への分散投資、と聞くと広く均等に分散されているのでは?と思ってしまうかもしれませんがそれは違います。

オルカンもS&P500と同様に四半期ごと、つまり年4回の銘柄入れ替え時期があり、その時の業績等によって適宜入れ替えが行われます。

2024年4月30日現在、オルカンの構成銘柄は以下のようになっています。

そんな中、アメリカ市場を主要な投資対象としつつも、世界中の株式市場にも分散投資を行うETF(Exchange Traded Fund)が存在します。

以下が主な米国中心の全世界株式ETFの例です。

ETF名特徴1特徴2
Vanguard Total World Stock ETF (VT)世界中の株式市場に投資し、約60%が米国株低い経費率と広範な分散が特徴
iShares MSCI ACWI ETF (ACWI)MSCI All Country World Indexに連動。米国株の割合が高い世界の大企業に分散投資を行う
SPDR MSCI ACWI IMI ETF (ACIM)世界中の大型・中型・小型株を含む広範囲に分散投資米国市場の比重が高く、全世界の株式市場をカバー

オルカンのデメリット

① オルカンの構成比率の6割がアメリカなので、完全なリスク分散にはなっていない

オルカンの構成国の約6割はアメリカが占めています。

そのため、全世界株式であってもアメリカの経済状況によって米国株が下落傾向となった場合、その影響を受けやすくなります。

 ② 過去リターンで見ると、S&P500と比べてリターンが低い

過去5年間のリターンを比較すると、オルカンのリターンが低いわけではないものの、S&P500に比べるとオルカンのリターンが低い傾向です。

 ③ 新興国株のリターンは米国株でも得られる

今後高い成長率が見込まれる新興国への投資によって得られるリターンは、米国株でも得ることが可能です。

なぜなら、米国の大企業の多くはグローバル企業であり、新興国でもビジネスを始めている企業も少なくないからです。

④ 今後運用コストが高くなる可能性がある

オルカン・S&P500の買い方

各証券会社によって、オルカン、S&P500の購入方法は異なります。

以下、証券会社別にまとめてみました。

SBI証券

SBI証券で投資信託を購入する場合はこちらから。

2024年4月時点での人気ファンドランキングでも、オルカン、S&P500関連が1位、2位となっていました。

SBI証券ファンドランキング
出典:SBI証券

楽天証券

楽天証券で投資信託を購入する場合はこちらから。

2024年5月17日時点での人気ファンドランキングでも、オルカン、S&P500関連が1位、2位となっていました。

楽天証券ファンドランキング
出典:楽天証券

マネックス証券

マネックス証券で投資信託を購入する場合はこちらから

2024年5月10日時点での週間売れ筋ランキングのNISA部門でオルカン、S&P500関連が1位、2位となっていました。

auカブコム証券

auカブコム証券で投資信託を購入する場合はこちらから

2024年5月19日に確認した週間販売金額トップ5ランキンでは、オルカン、S&Pが1位、2位となっていました。

オルカン・S&P500では「一括投資」と「積立投資」のどっちが正解?

投資をする際に、限りある手持ち資金を「一括投資」するのか、あるいは少しずつ「積立投資」するのか、悩むところですよね。

結論、

・一括投資の場合、買いのタイミング次第では大きな損になる可能性がある
・積立積立
の場合一括投資よりもリスクは小さくなる反面、リターンも小さくなる

となり、どちらも一長一短があります。

一括投資とは、投資に使うことのできる手元資金をまとめて特定の投資信託等の商品を購入することを指します。

一方、積立投資とは一定の期間ごとに一定の金額ずつ同じ銘柄を購入していくことを指します。

有名な積立投資の手法の1つに「ドル・コスト平均法」というものがあります。

用語解説

【ドル・コスト平均法】
毎月一定額を投資する方法。価格が高いときは少なく、価格が安いときは多く買うことで、平均購入価格を抑制できる。
長期的な資産形成においても有効な手法の1つとされる。

少額で始められて価格変動のリスクを抑えられるメリットがある一方、資産形成に時間がかかることや短期的な利益を生み出すことが難しい、といったデメリットも。

特に投資を始めたばかりで経験が浅い場合は、後者の積立投資によって徐々に投資することに慣れることから始めることをおすすめします。

インデックス投資は長期間にわたる運用の継続が基本

ここまでオルカンとS&P500について様々な角度から解説してきました。

改めてここでオルカンとS&P500というインデックス投資の基本とは何か?について触れていきます。

オルカンやS&P500といったインデックス投資は、10年20年といった長期にわたる運用の継続が基本です。

なぜなら、元本に上乗せされていく利益がさらなる利益を生む「複利」によって、大きなリターンを得ることを目標としているからです。

最後に、投資信託の特徴と実際のインデックス投資の保有期間の実際について見ていきます。

投資信託はインフレに強い

インフレに対して強い資産としてあげられるのが、株、外国債券、不動産、金、投資信託などの資産です。

なぜなら、これらの資産は物価の上昇と連動して価値が上がる傾向にあるからです。

逆に現金、預貯金、国内債券といった資産は、物価の上昇に反して価値が下がる傾向にある資産のため、インフレに弱い資産といえます。

つまり、現金や預貯金だけで資産形成していても、時間の経過とともに価値が目減りしてしまっている可能性が高いことを示しています。

価値を上げ続けるためにも投資は「長期」で「継続」することが重要なのです。

用語解説

【インフレ(インフレーション)】

物価が全般的に持続して上昇する現象。

  • ・モノやサービスに対する需要が供給を上回る
  • ・原材料や労働力のコストが上昇する
  • ・中央銀行が市場に多くの貨幣を供給する

などして発生。

適度なインフレは経済成長にプラスに働くが、急激なインフレ(ハイパーインフレ)は経済的混乱をもたらす危険性がある。

平均保有期間はたったの3年弱

インデックス投資における最大のメリットは、長期運用による複利で元本を大きく上回るリターンが期待できることです。

投資の神様として知られるウォーレン・バフェット氏も「10年間株を持てないなら、10分間すら株を持とうと考えてはいけない」として、長期運用の重要性をを謳っています。

逆に短期で売買を繰り返してしまうと長期運用で期待できる複利効果も期待できず、場合によっては大きな損失を被ってしまうこともあり、ギャンブル的な要素が高まってしまいます。

それほど重要な保有期間の現実はどうかというと、最新のデータでは全ファンドにおける平均保有期間は驚きの2.9年

これでも10年前との比較で1年以上伸びたとのことですが、本来長期運用で成果が上がりやすい投資信託が、結果として短期的、投機的運用になってしまっているのが現状だということです。

繰り返しますが、どんなに優れた投資信託でも、このような短期間で成果を挙げることは難しく、ギャンブルのような側面が強く出てしまう可能性が高いため、おすすめできません。

まとめ

この記事では、投資信託において人気の高い「オルカン」と「S&P500」について、その違いや特徴を解説しました。

最後に、この記事の振り返りをしてみます。

  • オルカンとS&P500は米国インデックスファンドの中でも人気の商品
  • オルカン、S&P両方への投資は分散投資という意味ではあまり意味がない
  • 現状は、オルカンに比べてS&P500の方がパフォーマンスが良い
  • リスク分散の観点からはオルカンがおすすめ!
  • 米国の経済成長を今後も期待するのであれば、S&P500がおすすめ!

「オルカン」と「S&P500」のどちらかに投資をしようと考えている方に、この記事が参考になれば嬉しいです。

最後までご覧いただきありがとうございました!

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