こんな悩みを解決していきます。
前半は、オルカンに関する基礎的な内容を11個のポイントに分けて説明します。
後半は、オルカンが人気な理由や購入可能な場所、オルカン以外の株式などについて説明します。
この記事を読み終わると、オルカンについての基礎知識は押さえられますので、ぜひ最後まで見てくださいね!
オルカンとは何か?押さえておきたいポイント11選
①:オルカンはファンド名
「オルカン」とは、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」という投資信託のことを指し、2018年10月31日に誕生しました。
読み方は「eMAXIS Slimは=イーマクシス・スリム」です。
②:運用会社は「三菱UFJアセットマネジメント株式会社」
オルカンを運用している会社は「三菱UFJアセットマネジメント株式会社」です。
オルカンの代名詞とも言える「eMXIS Slim」シリーズは同社が運用しています。
2023年10月1日に「三菱UFJ国際投資株式会社」から「三菱UFJアセットマネジメント株式会社」に商号を変更しました。
日本で最初の投信会社である「山一證券投資信託委託株式会社」は前身となります。
③:「オルカン」は登録商標
「オルカン」は「オール・カントリー(全世界株)」の略語で、運用する三菱UFJアセットマネジメント株式会社によって商標登録もされている言葉です。
④:オルカンは2種類ある
eMAXIS Slim 全世界株式には、
・「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」
・「eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)」
この2種類があります。
違いは名前の通り、投資対象に「日本」が入っているかいないか。
・ずっとオルカン1本! → eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
・日本株にも個別に投資していきたい! → eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)
となります。
しかし、誰も「どの国の経済が成長するのか」なんて分からないですよね。
そのため、投資対象の中には日本も含めておいた方が無難です。
⑤:トップクラスのファンド規模
数ある全世界株式を対象とするファンドの中でも屈指の規模を誇るオルカン。
2018年10月の取扱い開始後、順調に純資産を伸ばし続けており、2023年4月には初の1兆円突破。
新NISA(少額投資非課税制度)が始まった2024年1月以降、残高の増加ペースはさらに加速。2024年1月末に2兆円を突破。
そして2024年4月には3兆円の大台を突破。2兆円→3兆円へはわずか3ヶ月足らずで到達しています。
⑥:オルカンは「インデックスファンド」
投資の世界では主に、
【インデックスファンド】
日経平均株価やS&P500などの指数に連動することを目指すファンド
【アクティブファンド】
指数を上回る成績を目指すファンド
この2つに分けることができます。
インデックス投資は再現性が高く、広く利用されるため、オルカンはインデックスファンドを選択しています。
⑦:ベンチマークは「MSCI ACWI」
オルカンは、多くの機関投資家や投資信託がベンチマークとしている「MSCI指数」の1つである「ACWI」に連動することを目標としています。
MSCI とは
MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル社)は、株価指数や投資指数を作成・公表する会社です。
その中でも特に有名なのがACWI(オール・カントリー・ワールド・インデックス)です。
MSCIが作成する指数は、MSCI○○という形で知られており、機関投資家や投資信託のベンチマークとして広く利用されています。
ACWIとは
ACWIは、MSCI社が作成した指数の1つで、日本では「アクウィ」と呼ばれることもあります。
2024年2月末時点での特徴は以下の通りです。
投資対象国 | 先進国23カ国と新興国24カ国の合計47カ国 |
投資銘柄数 | 投資対象国で株式上場する約2900銘柄 |
カバー率 | 時価総額の約85% |
⑧:信託報酬が最安級
オルカンでかかるコストは主に「信託報酬」と「その他費用・手数料」の2つです。
このうち、「信託報酬」が他の全世界株ファンドと比べて安いのが特徴です。
ちなみに、2024年4月現在で信託報酬最安値は「楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド(楽天)」で0.0561%となっていて、信託報酬を巡る価格競争が激化しています。
順位 | ファンド名(略称) | 信託報酬(%・税込) |
1 | 楽天インデックス・オールカントリー | 0.0561 |
2 | eMAXIS Slim全世界株(オールカントリー) | 0.05759 |
3 | eMAXIS Slim全世界株(除く日本) | 0.05770 |
4 | はじめてのNISA全世界株式 | 0.05775 |
5 | eMAXIS Slim全世界株(3地域均等型) | 0.05775 |
引用:お金の総合サイト!ZAiONLINEより一部抜粋
また、オルカンでは「受益者還元型信託報酬率」というルールを採用。
これによりファンドの純資産総額が増えるほど、相対的に運用にかかるコストが安くなるので、よりお得になります。
オルカンのような長期運用の積立投資では、特にコストは意識すべき大切な点です。
信託報酬の計算方法
オルカンでは、日々の純資産額に対して年率0.05775%以内をかけた金額がかかります。
信託報酬は1日ごとに差し引かれ、計算方法は「信託財産×◯.◯◯%(信託報酬)×1.1(消費税)÷365」です。
例えば、信託財産(保有財産の残高)が100万円の場合、
100万円×0.05775%×1.1÷365=1.7404…
となり、日々1.74円の信託報酬が差し引かれることになります。年間だと635.24…円となりますね。
信託報酬以外のコストってあるの?
信託報酬以外のコストは大きく分けて①直接的に負担する費用と②間接的に負担する費用の2つあります。
ちなみに信託報酬は②に該当します。
①直接的に負担する費用
【購入時手数料】
投資信託を購入する際、購入代金とは別に販売会社に支払う費用。
【信託財産留保額】
投資信託を換金(解約)する際に手数料とは別に発生する費用。
②間接的に負担する費用
【売買委託手数料】
投資信託が投資する株式を売買する際に発生する費用。
【監査報酬】
監査法人などからの受ける監査に要する費用。監査は原則決算期ごとに行われる。
【その他】
上記以外に投資信託によって発生する費用。
投資信託によっては信託報酬以外のコストの割合によっては実質的なコストが割高になる可能性があります。
しかし、多くの場合は信託報酬に比べてその割合は低いため、実質的に信託報酬=かかるコストと見られることが多いようです。
⑨:投資先はアメリカが約60%
オルカンは全世界株式とはいっても、ACWIに連動した指数を目指してる投資信託です。
ACWIの特徴
投資対象国:先進国23カ国+新興国24カ国=計47カ国
投資銘柄数:約2900銘柄
カバー率:時価総額の約85%
そのACWIは「時価加重型」で運用しています。
時価総額が大きい銘柄ほどたくさん投資し、逆に小さい銘柄は少しだけ投資する。
つまり、成長力のある国にはたくさん投資し、成長力が弱い国には少なく投資する、ということになります。
このようにして、そのときに適切な割合で投資先を調整してくれるため、投資家が投資先を考える必要がありません。
今の投資先は約62%がアメリカ、日本は5.6%です。
「あれ?日本の割合が少なくない?」
と思われるかもしれませんが、アメリカの割合だけが突出しているために、他の国の割合が相対的に小さくなってしまっているわけです。
実際、先進国の中で見れば日本はアメリカについで2番目の投資割合です。また、組入上位10銘柄の内9銘柄がアメリカ企業と圧倒的なシェアを誇っています。
S&P500はアメリカ100%
ちなみに「オルカン」とよく比較される「S&P500」は、ニューヨーク証券取引所やNASDAQなどに上場している米国の主要大型株500社で構成される株価指数なので、構成割合は100%アメリカです。
オルカンとS&P500に登場する企業は重複する点が多いことも多く、しばしば「オルカンとS&Pではどちらがいいのか?」が議論になります。
引用:新NISAナビ
アメリカの割合が多い理由7選
このように、オルカンでは約60%、S&P500においては100%をアメリカの株式が占めています。なぜこんなにもアメリカの割合が多いのでしょうか?
それは、
- 先進国では数少ない人口増加国だから
- 世界最大の経済大国だから
- 政治が安定しているから
- 地政学的に見てリスクが少ないから
- イノベーションはいつもアメリカ発だから
- 法や会計制度の充実しているから
- 株主重視の文化が根づいているから
こういったことが理由として挙げられます。
不確実性の高い投資の世界において、限りなくリスクを最小化するのは必須です。その条件に合致する国が「アメリカ」なんですね。
⑩:分配金はない
オルカンは「分配金」のない投資信託です。
分配金がないってどういうこと?
オルカンは計上した利益をすべて再投資に回すことで、分配金を支払うファンドに比べて資産成長や効率を最大化しています。
つまり、分配金という形でこまめに利益を受け取るより、分配金として受け取れる利益をさらなる投資に回すことで、より多くのトータルリターンを期待している、ということです。
そのため、投資信託の運用によって分配金を受け取りたい!という方は他のファンドを選ぶ必要があります。
⑪:トータルリターンは好調
オルカンはトータルリターンが高く、効率的に運用されているファンドです。
以下の画像を見ると、オルカンはファンド設定以降順調にリターンを生み出していることが分かります。
2018年10月にファンドを設定した以降、コロナショック等により一時的に下降した時期があったものの、世界経済全体としては上向き傾向であったため好調な数字になっています。
このことからも、オルカンは効率的に運用されている優良ファンドであるといえます。
これからも成長が期待されている世界経済を背景に、オルカンも成長することが期待されますね!
平均利回りとトータルリターンの違い
投資信託には、「平均利回り」と「トータルリターン」という2つの考え方があります。
【平均利回り】
投資元本が一定期間(通常は1年)に平均してどのくらい利益を上げたかを示したもの
【トータルリターン】
投資によってもたらされたすべての利益や損失を合わせたもの
投資信託を選ぶときは、平均利回りではなくトータルリターンを選ぶのがオススメです。
なぜなら、トータルリターンは分配金を再度投資に回すことを想定しているため、実際の利益の合計がわかる仕組みになっているからです。
高い平均利回りをうたっていても、手数料が高いファンドは最終的なリターンが低くなる可能性があり注意が必要です。
本当にオルカンは人気なの?
「オルカンが人気である」これは本当なのでしょうか?
「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the year2023」においてeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が2位に大差をつけて1位を受賞。
これは2019年から5年連続受賞の快挙です。
また、関連商品を含め10位以内に5本の商品が入るなど、まさに人気を裏付ける結果となっています。
人気の背景には、2024年1月より始まった新NISAによって投資に対する興味関心が高まったことも一因であると言えそうです。
オルカンが人気な理由3選
ではなぜここまでオルカンが人気なのでしょうか?
1.オルカン1本で全世界の優良な銘柄に分散投資できるから
オルカンなら世界中の優良企業へ分散投資でき、いつ、どの国が大きく経済成長してもその恩恵を享受できます。
世界経済全体を見ると、右肩上がりでの成長を示しており、今後も成長を続ける予想が立てられています。
一方でいつ、どの国が経済成長するのかがわからないのと同じように、いつ、どの国が経済危機に陥るか、も正確にはわかりません。
だからこそ1つの会社にだけ投資するのではなく、複数の会社に分散投資をして、値下がりの影響をできるだけ受けないようリスク分散させることが重要となります。
1つ1つわざわざ確認しなくても、その時に最適な複数国の企業に自動で分散投資してくれる仕組みとなっているのがオルカンなのです。
2.信託報酬が安いから
オルカンは、全世界株式に分散投資できるファンドの中で信託報酬が0.05775%(税込)以内と極めて低水準です。
順位 | ファンド名(略称) | 信託報酬(%・税込) |
1 | 楽天インデックス・オールカントリー | 0.0561 |
2 | eMAXIS Slim全世界株(オールカントリー) | 0.05759 |
3 | eMAXIS Slim全世界株(除く日本) | 0.05770 |
4 | はじめてのNISA全世界株式 | 0.05775 |
5 | eMAXIS Slim全世界株(3地域均等型) | 0.05775 |
引用:お金の総合サイト!ZAiONLINEより一部抜粋
投資信託では、保有している間ずっと、信託報酬と呼ばれる手数料が信託財産から引かれます。
信託報酬は投資資産の〇%という割合で示されるため、運用で増えていけばその分信託報酬として引かれる金額も増えていきます。
事前にどの程度の利益や損失が出るのかを予想することは困難です。一方で信託報酬として引かれるコストは明らかなので、同様の投資信託であれば手数料が安い商品を選ぶのがとても大切です。
3.運用実績があり、純資産総額が大きいから
オルカンは、5年以上前からファンドの運用を始めており、他のファンドに比べて運用実績が豊富です。
また、同様のインデックスファンドの中でも純資産総額が突出して多いのも特徴。
投資信託は、投資家から集めたお金をまとめて分散投資して利益を得ることを目的にした仕組み。
つまり、投資のための資金が少ない=運営に悪影響を及ぼしかねません。
最悪「繰上償還」によってファンドの運用自体を終えなければならなくなる、なんてこともあり得ます。
そのため、そもそもの運用実績があり、かつ長期間の運用にも耐えられる純資産総額が大きいファンドの方がリスクが低く、安心して運用を任せられるのです。
どんな人がオルカン投資におすすめ?
ではオルカンはどのような人におすすめなのでしょうか?
オルカンは以下の人におすすめのファンドです。
- 投資初心者
- 何に投資していいか迷っている人
- 長期的にリスク分散して投資をしていきたい人
- 投資に時間をかけたくない人
将来どの国が成長してどの国が衰退していくのかを予測するのは難しく、ポートフォリオを個別に考えるのは時間も労力も必要です。
しかしオルカンは、これらの悩みを一気に解決してくれるでしょう。
一方で「自分でポートフォリオを考えながら投資を行っていきたい」と考えている人には向かないかもしれません。
オルカンはどこで買える?
オルカンは全国の銀行や証券会社、ネット証券会社など多くの金融機関で取り扱われています。(2024年4月時点における取扱販売会社は47社)
新NISAのつみたて投資枠や成長投資枠において購入可能なほか、iDeCoでの商品ラインナップに入れている金融機関もあります。
オルカンのおすすめの積立日はいつ?
オルカンなどのインデックスファンドの場合は、自分の都合に合った日に購入、積立をすればOKです。
一般的に、月初や月末は多くの人が選ぶため買い注文が増えることがあり、その時期は避けることが勧められることもあります。
しかし、月初や月末は個人だけでなく機関投資家も活動するため、「買い」だけでなく「売り」も多くなる可能性があります。
長期的に見ても、積立日の違いによる利益の差はほとんどないと考えられるので、個人取引においては積立日を強く意識する必要はありません。
オルカン以外の全世界株式ファンドは?
ではオルカン以外に全世界株式へ投資できるファンドはあるのでしょうか?
以下がオルカンを除く、全世界株式へ投資できるファンドの一覧になります。
ファンド名 | 運用会社 |
楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天・VT) | 楽天投信投資顧問 |
全世界株式インデックス・ファンド | SSGA |
SBI・全世界株式インデックス・ファンド(雪だるま(全世界株式)) | SBIアセットマネジメント |
野村つみたて外国株投信 | 野村アセットマネジメント |
たわらノーロード全世界株式 | アセットマネジメントOne |
三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンド | 三井住友DSアセットマネジメント |
つみたて全世界株式 | 三菱UFJアセットマネジメント |
eMAXIS 全世界株式インデックス | 三菱UFJアセットマネジメント |
ご覧の通り、オルカン以外の全世界株式ファンドは数多く存在することがわかります。
あれ、eMAXISシリーズが一覧に入っているけど、オルカンとの違いはあるの?
確かにぱっと見ではその違いがわかりにくいですが、ちゃんと違いはあります。
このような違いにより、商品に違いができています。
2009年に誕生したeMAXISシリーズも当初は業界最低水準の信託報酬率でした。
その後「業界最低基準の運用コストを将来にわたって目指し続ける」というコンセプトのもと2017年にeMAXIS Slimシリーズが誕生。
このようにして日々、取り扱う商品も進化しているんですね。
なお、運用会社によって純資産総額や信託報酬などのコストが異なりますので、実際に投資をする際にはよく比較して一番良いと思われるファンドを購入するようにしてください。
オルカン以外への投資は必要なのか?
株式投資においてオルカンを中心に解説してきましたが、この最強とも言うべきオルカン以外への投資は必要なのでしょうか?
繰り返しになりますがオルカン自体がそもそも全世界株式への投資です。
その時その時の投資先を自動で最適化してくれるため、長期的な運用においてはオルカン一本でも問題ないでしょう。
ですが、
そうはいってもオルカンだけで本当に大丈夫なの?
オルカンだけでは、利益の取りこぼしがあるんじゃないの?
そう思われる方もいるでしょう。
そこで、オルカンにプラスする方法を1つ紹介します。必要に応じて購入を検討してみてはいかがでしょうか?
債券への投資
オルカンという株式投資に付け加える、ということはすなわちオルカンではカバーしきれないところへ投資する、ということを意味します。
「オルカンだけだと心配だし、ちょっとリスクがあるかな」
こう思う方には「債券」が良いかもしれません。
債券と聞くと、とっつきにくい印象をうけるかもしれませんが、有名な債券としては「国債」があります。
日本の国債を購入したい場合は、財務書のホームページで詳しく説明していますので、興味のある方はチェックしてみてくださいね。
まとめ
この記事では、「オルカンとは何か?」という疑問を中心に前半ではオルカンに関する基礎的な知識を中心に解説しました。
後半では、「オルカンがなぜ人気なのか?」「なぜアメリカ株式が多いのか?」「どこで買えるのか?」などについてより踏み込んだ内容を解説しました。
この記事によってオルカンや投資についての知識が深まれば幸いです。